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ドライウォール工法の発展

ドライウォールとは何か

北米住宅の9割の内装はドライウォール工法で占められています。成分的にドライウォールを解説しますと、ドライウォールは石膏(ジプサム)という鉱石を基としています。この鉱石は硫酸カルシウムが結晶化された水と化学融合して構成されており、重量比で21%は水分であり、ドライウォールに耐火性を与えているのがこの水分なのです。
ドライウォールを加熱すると含有水分が蒸気となりその蒸気が耐火を助長します。ドライウォールの耐火時間は1時間から4時間です。

初期のドライウォール

ドライウォール業界は歴史的に改良開発を積み重ねてきております。1900年代初期の進歩はオーガスティン・サケツト氏により何層かの紙で石膏板を両側から挟みこんだ初めての壁板サケットボードが発明された事です。1894年に特許を取得したこの壁板サケツトボードは取り付けが簡易で従来の漆喰壁工法の乾燥時間を削除する物でした。その後1916年に第一次世界大戦中、軍の簡易施設を短期間で建設する事を可能とし、この製品が普及促進されました。同時期にUSG(ユナイテッド・ステート・ジプサム社)がSheetrock(シートロック)というブランド名で、ドライウォールを継ぎ合わせ施工した際に平滑な面が出せる、一層の紙で石膏板を挟んだ板状ドライウォールを製造し始めました。
軍事施設に当時のドライウォールが美的でないことは普及の障害になりませんでしたが、一般住宅及び商業施設では従来の漆喰の滑らかな仕上面と様々なデザイン性を出すことができることから漆喰の人気は根強いものでした。1933年から1934年にシカゴで開催された世界博でUSG社は大々的にこのドライウォールを宣伝しました。世界博の建物建設の大半をドライウォールで施工し新製品である目地テープとジョイントコンパウンド(別称マッド)の導入により漆喰に匹敵する統一な仕上面を出したのです。しかし施工方法の変更はどの時代でも蹟曙するものであり、また強度も歴史のある従来の漆喰工法に劣ることからこの場合もドライウォールの普及までは時期を待つことになりました。

新しい需要

第二次世界大戦が起こり再び軍事施設と軍簡易施設の需要により米政府は効率の良い施設建設方法を模索する必要性に迫られました。そこで長期間の乾燥時間を要する漆喰工法の代わりに1日で釘打ちされ目地テープを施工できるドライウォールが採用された。
  終戦後、施工業者は従来の時間のかかる漆喰工法に戻るのに抵抗を感じました。ジョイントコンパウンドの品質向上と石膏ベースで模様をつける方法が建築家及びデザイナーに仕上の選択幅を広げた事もあり、また1940年、1950年代のベビーブームもあり住宅の需要が高まり施工が早く簡単なドライウォール工法が市場を占めるようになりました。


継続的な発展

ドライウォール製品の技術革新は何年間にも渡り行われてきております。最近の開発では1980年代の軽量ジョイントコンパウンドが挙げられます。従来のジョイントコンパウンドに材料を加え空気を含ませることにより軽量化を図った製品です。軽量化されたことによりジョイントコンパウンドが乾燥する際の縮小率が抑えられ、その結果仕上げトッピングの層も従来のジョイントコンパウンドより少なく済みます。同様に石膏ボードにもこの軽量化が図られました。石膏板製造の段階で空気泡を石膏内に閉じ込め、強度のある紙でボードを挟むことにより強度を妥協せず石膏ボードが軽くなり、施
工業者の疲労を抑え生産性を挙げる結果になりました。また施工方法と施工技術の革新によっても施工生産性が向上しました。水圧ジャッキでドライウォールを天井まで持ち上げ、電動ネジ機で石膏ボードを構造材に留めることにより、またアムス兄弟により発明されたオートマティックテーパーにより従来の手作業に比較して飛躍的に施工性が上がりました。アムス社は現在オートマティックテーパーを筆頭に目地処理に必要な各種工具のレンタルをビジネスとしております。その他何社かが販売用にオートマティックテーパー及び目地処理用工具を製造しています。
  製造過程も改良されつづけております。石膏ボードの廃棄分はそのまま生産過程で原材料と混合できるリサイクル商品です。石膏ボードに利用されている積層紙の上層2枚のみが漂白されて白色ですがその積層紙も100%リサイクルされています。

ドライウオール仕上のレベル

ドライウォール仕上げの統一された基準作成に当たり4業者協会が仕上げレベル段階分けを図りました。この基準により施工主の要求と施工業者に課せられた現場での作業を明解にすることが可能です。全体で6段階のレベルになっていますがこれらを簡単に説明します。
レベル0:
テーピングなし、仕上げなし、コーナー等の役物なし。
レベル1
全てのボード継目、出入り隅にコンパウンド付けされたテープが貼られて、余分なコンパウンドがボード面についていない状態。工具の跡は許容範囲。
レベル2:
全てのボード継目、出入り隅にコンパウンド付けされたテープが貼られておりコテで余分なコンパウンドを取り去ると同時に薄いトッピング層をボード継目、入り隅に残す。さらにその上からもう1層のトッピング層を塗布。釘、ネジ頭、コーナー役物上もトッピング層を2層塗布。全体が滑らかで工具の跡やコンパウンドの角が出ていない状態(ドライウォールプライマーを使用し仕上の下地をつくる事が推奨されている)。
レベル3:
全てのボード継目、出入り隅にコンパウンド付けされたテープが貼られておりコテで余分なコンパウンドを取り去ると同時に薄いトッピング層をボード継目、入り隅に残す。さらにその上からもう1層のトッピング層を塗布。釘、ネジ頭、コーナー役物上もトッピング層を2層塗布。
全体が滑らかで工具の跡やコンパウンドの角が出ていない状態(ドライウォールプライマーを使用し仕上の下地をつくる事が推奨されている)。
レベル4:
全てのボード継目、出入り隅にコンパウンド付けされたテープが貼られておりコテで余分なコンパウンドを取り去ると同時に薄いトッピング層をボード継目、入り隅に残す。さらにその上からもう2層のトッピング層を塗布。釘、ネジ頭、コーナー役物上もトッピング層を3層塗布。
全体が滑らかで工具の跡やコンパウンドの角が出ていない状態(ドライウォールプライマーを使用し仕上の下地をつくる事が推奨されている)。
レベル5:
レベル4にジョイントコンパウンドを用いたスキムコートを全面に塗布するかスキムコートに代わる商品としてメーカーが製造する商品をボード全面に塗布する。

レベル5が最も高いレベルの仕上げであり、吹き付け模様の無い仕上げ面、或いは光沢のあるペンキ仕様の面、過酷な光が照射される面(自然熱が壁に平行に照射される場合等)に施工されています。ドライウォールが完璧な壁の仕上げ方法でありませんが、最も効率的でデザイン性のある内壁仕上げ工法として普及しているのが北米の現状です。
(アメリカ産業情報20号より)

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